北辰一刀流

龍馬江戸遊学-さな子は小千葉の鬼小町

 

 

さな子は逆胴の名手である。

相手の竹刀を自らの竹刀の表で軽く擦りあげつつ

左足から体を左斜めに退き、素早く手を返して、パンと逆胴を撃つ。

 

 

剣客の娘は強い男(龍馬)に恋心を抱く

 

 

龍馬は姉乙女に手紙に書いている。

『今年廿六歳ニなり候。馬によくのり劔も余程手づよく、長刀も出来、力ハなみ/\の男子よりつよく、かほかたち平井より少しよし。』

これは姉に素晴らしい女性がいるんですよという打ち分け話でもある。

 

 

小千葉小町、如何にもこういう娘は江戸にしかいない

 

 

紫色が好きだ。

防具の紐はすべて紫を彩り、稽古着は白、袴は紫染のものをすそ短かに結んでいた。

その姿は少年のように可愛い。

 

 

門人と好き勝手に稽古はしなかった。

二つ上の重太郎が相手を指名する。

さな子は常に控えめである。

 

 

そのくせ立ち会えば必ずさな子が勝つ。

ただし、重太郎は相手の名誉を重んじ「あれはうちが浅いよ、真剣ならあんたは大丈夫だ。」

どちらにも皮肉を利かせつつ、どちらも傷付かないように講評するのが上手だ。

 

 

何故か龍馬とは立ちあわせない。

龍馬は日に日に腕を上げ誰もがさな子の婿の候補にと思い始めていたらしい。

龍馬は強い、次男坊でもありさな子の婿にしようと考えているのではないか?

 

 

「だから容易には立ちあわせないのだ」

龍馬がさな子を圧倒する実力になるのを千葉家では待っているのだろう。

さな子は密かに龍馬に好意を持っていた。

 

 

まるで池波正太郎原作の『剣客商売』での

秋山大治郎と佐々木三冬の間柄みたいなもんだね

本当に夫婦になれてたら良かったと思う。(竜馬とさな子)

 

 

 

重太郎とさな子との仲があって松平春嶽から勝海舟へとつながる

 

 

松平春嶽と謁見出来て龍馬の人生は大きく舵を切った。

ただ会っただけで好意を持って話ができたわけではない。

小千葉の塾頭であったことや重太郎と懇意であったこと。

 

 

これが春嶽の聞く耳を真剣にさせたのだと思う。

脱藩して行く場所もなく小千葉道場に寄宿している。

龍馬にとってさな子、重太郎、貞吉は親兄弟のような存在だった。

 

 

そして西国雄藩と大公儀側の要人とも親交が持てた。

司馬さんのお龍は龍馬が助けなければ生きて行けない。

さな子もお田鶴さまも龍馬がいなくても生きていける。

 

 

この考えはちょっとおかしいと思う。

結局、腰間に二刀をさせない時代に

さな子は気ままには生きられなかった。

 

 

江戸小千葉での名声が西国雄藩での龍馬の認知度を高めた

 

 

江戸での初期遊学中の詳細な龍馬の資料はない。

だから信夫左馬之助が必要だったと思う。

お冴や寝待ノ藤兵衛の出番がないと物語が続かない。

 

 

フィクションというより龍馬を語るに置いて

その他の人物として市井の人物を描く必要性があった。

龍馬のさな子への思いは複雑だった。